2022年12月09日

34年ぶりの桂離宮

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先日、友人達と桂離宮を訪ねた。
大学生の時に行ったきりだったので34年ぶりと言う事になる。
元々庭園を巡るツアーなので主な建物には入れず、今は工事中の為古書院と中書院の外観も見られない。
それでも屋根を葺き替えたばかりの新御殿を見ると、穏やかなのに鈍くはなく、繊細なのに脆弱ではなくて、やはり素晴らしい建物だと感じられた。
庭で面白いと思ったのが両側に苔を配した土橋で、手摺など無くても不安感は無く、自然が上手く取り入れられていて、今の言葉で言えば優れたデザインだと思った。
もう一度訪ねれば、きっとまた何か感じられるだろう。


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2022年02月28日

そもそもそうですか住宅設計 : Is that so the design of house in the first place?

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昨年2021年の末に、先輩建築家の増田奏(ますだすすむ)さんが絵と文を書かれた「そもそもこうだよ住宅設計」が出版された。
2009年に出版されベストセラーとなった「住まいの解剖図鑑」の続編で、住宅設計を学ぶ学生、若い設計者、これから家を建てようと言う方々に向けた本と書いてあるけれど、若くない設計者である自分にも面白く為になる。
たとえば、雨水が建物に入るのを防ぐ「雨仕舞(あまじまい)」。
そもそも雨仕舞は防水ではなくてカタチの工夫であって、雨水とまともに戦っても勝ち目は無いから、無駄な抵抗はやめて素直に、あっさり、軽くいなすのが得策、と言う考え方が示され、その上で具体的なデザインが紹介される。
少し大袈裟かも知れないけれど、そこにはハウトゥーではなくてフィロソフィーが有る。
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2022年01月25日

横浜の名建築をめぐる旅 : Trip around the remarkable architecture of Yokohama

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横浜には歴史的な建物が幾つも残っているけれど、どれもヨーロッパに有るような古いものではないし、東京に有るような大きいものでもない。
でもそうした建物だからこそ親しみ易く愛すべきものに感じられる、とも言える。
昨年出版された「横浜の名建築をめぐる旅」と言う本を読むと、改めてそうした事に気付く。
この本では関内や山手を中心に32の建物が取り上げられ、詳し過ぎずに的を得た菅野裕子さんの文章と、建築写真らしくなくて良い本多康司さんの写真で紹介されている。
例えば横浜貿易会館、海洋会横浜会館、昭和ビルと言う海岸通りに並ぶ3棟の建物は、同じ頃に建てられ同じ位の規模で兄弟のようだけれど、それぞれに個性が有り、魅力的な街並みを形作っている、と言う事が良く解る。
この本を片手に横浜の街を歩く事をお勧めしたい。
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2021年12月21日

「資本論」について : About“Das Kapital / The Capital”

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先日、カールマルクス(Karl Marx)が書いた「資本論」(Das Kapital)を漸く読み終えた。
月に1度の日曜講座に参加して1年で第1部、1年休んだ後のもう1年で第2部と第3部を学びながら、充分とは言えないまでも、どうにか念願をかなえる事が出来た。
マルクスが生前に完成したのは第1部だけで、第2部と第3部は盟友のエンゲルスが草稿を元に完成させたのだけれど、続けて読んでみると、第2部と第3部が有ってこそ、資本論は今でも読むに値するものになっているように思う。
中でも感心したのは、第3部第5編の利子生み資本の所だ。
第1部で説明されているように、資本主義的な生産様式が確立すると、資本家は労働者が生み出した剰余価値を搾取し、それを資本として再投資する。
しかし資本主義社会が発展するにつれて、剰余価値は利潤と見做されるようになり、それが利子と企業者利得に分割され、資本家も利子生み資本家と産業資本家に分裂する。
そして利子生み資本家と産業資本家はその分け前をめぐって争うようになり、階級的対立は、労働者と資本家の間から、働く労働者ならびに産業資本家と、所有するだけの利子生み資本家の間のものとなる。
そうした解明は、現代に繋がる問題を鋭く捉えていると思う。

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2021年07月10日

絶品・日本の歴史建築 : Remarkable Japanese historical architecture

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良い建物を訪れて実際に体験する事は建築家にとって大切な事だし、また楽しい事でもある。
それが新型コロナウィルス感染が問題になって、ままならなくなってしまった。
その不満を一時補ってくれたのが、磯達雄さんと宮沢洋さんが書いた2冊の本、「絶品・日本の歴史建築[東日本編]、[西日本編]」だった。
大正時代以前に建てられた日本の建築から、これぞ見るべきと言う59件が、写真と磯さんの文章、宮沢さんのイラストで紹介されている。
59件には有名なものもそうでないものも有って、世の中の評判や学者のお墨付きとは関係無く、あくまで自分達の目に適ったものを選んだ、と言う所が良い。
お2人とも僕と同世代なので、勝手に同行したような気分になって読み進めた。
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2021年06月24日

梅酒漬けたて : Freshly pickled plum wine

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庭の梅の木に実が生り、ぽつぽつと落ちて来てからやっと収穫した。
もう大分色付いていて梅干しに良さそうだったけれど、前に自分が作った物、その前に母が作ったものがまだ沢山有るので、梅酒と梅シロップを作る事にした。
梅酒の方は、梅1kgに対して焼酎2.2Lと氷砂糖0.5kg。
この比率は人によって差が有るようだけれど、材料の都合も有ったので焼酎は多め、砂糖も少し多めにした。
3、4年経って飲み頃になっても、自分で飲むのはせいぜい1/10位だろう。
来年はまた違う物に挑戦してみようかと思う。



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2021年05月01日

人新世の「資本論」 : “The Capital”in Anthropocene

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斎藤幸平さんが書いた「人新世の「資本論」(ひとしんせいのしほんろん)」を読んでみた。
語り口は穏やかで解り易いけれど、内容はかなり過激だ。
認識として、資本主義は人類の幸福とか地球環境の保全とかとは関係無く利潤の最大化を目指す、だから変えなければならない、と言う所までは素直に賛成出来る。
でも方法論として、地球温暖化問題を解決する為には資本主義の「修正」では不十分、だからケインズもスティグリッツも駄目、北欧の社会民主主義も駄目、投票で政治を変えるのは無理だから市民運動をするべき、となると、付いて行けないと感じてしまう。
資本主義に問題は多いとしても封建制や奴隷制よりましなのでは?、議会制民主主義も独裁や王政よりましなのでは?、と聞いてみたくなる。
それでも頭ごなしに否定出来ないのは、斎藤さんが若いからで、あなた達の考え方、やり方ではもう駄目なのですよ、と言われているように思えた。
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2020年12月29日

槇文彦展 : The exhibition of Maki Fumihiko

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12月27日まで横浜のBankART(バンカート)で槇文彦展が開催されていた。
僕は以前槇さんが率いる槇総合計画事務所に勤めていたので、半ば身内の気持ちで見る事になった。
槇事務所は今年完成した新市庁舎だけでなく、横浜で数多くの仕事をしていて、書くべき事は色々有るけれど、会場に入ってすぐ代官山ヒルサイドテラスの展示が有るのを見て、やはり代表する仕事はこれなのかな、とまず思った。
ヒルサイドテラスの1期が完成したのは僕がまだ子供だった1969年で、日本橋に有った槇事務所の移転先となったウェストが完成したのは1998年。
僕が仕事として関わる事はほぼ無かったけれど、辞める前に暫くこの建築と街を体験した事は、良い財産になった。
人目を引く派手なデザインは無いし、特殊な材料や工芸品が使われている訳でもなく、建築家の個性は前面に出ていない。
それでいて、施主から全幅の信頼を得て、内外から広く注目を集め、建築文化に確かな貢献をしている。
こうした仕事が如何に貴重で成し難いものか、自分の事務所を持ってからやっと解ったように思う。
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2020年10月09日

新しい横浜市役所を利用して : Using the new city hall of Yokohama

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先日、今年春に移転した新しい横浜市役所を利用した。
建物は僕が以前勤めていた槇総合計画事務所がデザイン監修をしたもので、横浜の顔として誇れるものになったと思う。
でも利用者の立場からすると、良い事ばかりではないようだ。
その日は建築局に用事が有ったのだけれど、まず担当職員に電話をして時間を決め、受付でカードを受け取ってゲートを通り、訪問先の階に着いたら内線電話で職員を呼び出し、打ち合わせコーナーで用件を済ます、と言う手順になった。
職員が働く執務スペースには入れず、ガラス張りと言う訳でもないのでその様子は解らない。
今の時代の事務所としては当然なのかも知れないし、市民とのやり取りは別の部署が担うと言う事だろうけれど、以前と比べて職員との距離が随分大きくなってしまったように感じた。

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2020年08月11日

マホロミ、時空建築幻視譚 : Mahoromi, Stories of buildings over the times and spaces

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友人の建築家が協力をした漫画、冬目景さん作の「マホロミ、時空建築幻視譚」を読んでみた。
主人公は建築を学ぶ大学生の土神東也(にわとうや)で、舞台は横浜。
モデルになっているのは、東也が通う大学が神奈川大学、アルバイト先の設計事務所が友人の事務所、その事務所が入る建物が馬車道の大津ビルなのだろう。
東也は有名な建築家の孫で、古い建物に触れると、それに関わる過去のイメージを見る事が有る。
そして解体中の洋館で出会った不思議な少女、真百合も同じ能力を持つのだった。
東也の学生生活に建物や街の歴史、それに祖父や真百合の物語が織り込まれるように加えられていて、中々面白い。
設計事務所の所長に近い歳の筈の僕が、東也のつもりになって夢中で読んでしまった。
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2020年07月31日

工房の風景 : Scene of the studio

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新型コロナウィルスが問題になって家に居る事が多くなり、家の中の物が色々と気になり出した。居間で使っている椅子もその一つで、座面のペーパーコードが大分傷んでいたので張り替えて貰う事にした。その作業をする工房が近くの町田市に有る事が解ったので、そこへ自分で持ち込んで送料を節約しようと考えた。普段見る事が出来ない作業場所を見てみたいと言う気持ちも有った。
実際に行ってみると、思ったより遠くて時間が掛かったけれど、作業をしてくれるSさんは気さくな人で、色々と話しを聞けて楽しかった。またその工房が独特な場所で、放棄された鉄筋コンクリートの構造物を借り、自分で屋根や床、設備を付け加えたのだと言う。元々の構造物が持つ迫力と、加えられた設えの実用的な清々しさが重なって、暫く見入ってしまう程の魅力が有った。
その工房は作品では勿論: ないし、土着的と言うのでもない。しかし確かな存在感と、そこに有る理由、意義を持っているように思われた。帰ってから自分の生活や仕事を振り返って、あまりにも小綺麗で薄っぺらい世界に慣れ切ってしまっているのではないか、と思ってしまった。
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2020年01月31日

日本大通りのフランシス真悟作品 : Francis Shingo’s work at Nihon odouri

フランシス真悟作品集

日本大通りにGALERIE PARIS(ギャラリーパリス)と言う素敵な画廊が有る。
今開催されている「新春21世紀展」には42人の作家の小品が並んでいて、その中のフランシス真悟と言う人の絵がとても印象的だった。
小さめのキャンバスで少し黄緑色がかった乳白色が一面に広がっているのだけれど、そこに微かな輝き、或いは光沢が感じられ、見る位置によって変化する。
画廊のかたの話しでは、外からの光が変わればまた見え方も変わると言う。
その魅力を言葉で表わす事は難しい。
残念ながら衝動買い出来る値段ではなかったので、作品集を買う事にした。
画像に載せたのはその表紙で、2010年に描かれた”Space (blue)”と言う作品が背景になっている。
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2019年10月30日

ぎふメディアコスモス : Gifu Media Cosmos

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先日岐阜へ行く機会が有り「ぎふメディアコスモス」を訪ねた。
図書館や交流センター、展示ギャラリーなどからなる市の施設で2015年に開館し、設計監理は伊東豊雄建築設計事務所。
画像に載せた2階の図書館ではグローブと呼ばれる天井から吊られた幾つもの覆いが空気の流れや光を制御し、それぞれの場所を作っている。
技術と意匠が高い水準で一致し、しかも居心地の良い場所が出来ていて、素晴らしいと思った。
一方で外観は、特徴的ではあるけれど内部の良さが現われていないようで少し残念だった。
また雑誌の記事によれば、開館後に雨漏りや結露の不具合が度々起こったと言う。
詳しい事は解らないが、複雑な形の屋根を木で作り雨水を柱の中を通して排水すると言う設計は危険度が高いものだったように思う。

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2019年08月09日

まちのような学生寮 : Dormitory like a town

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オンデザインが設計監理をした(仮称)神奈川大学国際学生寮を見学させて貰った。
200余り有る個室は最低限の広さにして吹き抜けを含む共用部を大きく取り、そこに20位有るポットと呼ばれる場所やキッチン、水周りなどが点在している。
ポットは個室より少し広い大きさでそれぞれ家具や仕上げが異なり、日常的な居場所となる事が期待されている。
単なる個室の集まりではなく、また一つの場所を中心に全体がまとまっているのでもない構成は、集まって住む形の一つの提案になっていると思った。
ただ設計者として見ると、ポットの設えは少し作り過ぎているように思った。
もう少し控え目な方が使い易いのではないだろうか。
出来れば実際に使われた姿を見てみたい。
家具のデザインは藤森泰司アトリエによるもので、建物と良く合いその魅力を高めていた。
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2018年08月31日

1分の1と3分の1 : The one first and the one third

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六本木の森美術館で開催されている「建築の日本展」を見に行った。
一番良かったのは、千利休作と伝えられる茶室の待庵(たいあん)が原寸で再現されていた事。
待庵に限らず国宝や重要文化財になっている茶室は見るとしても外側からだけ、と言うのが普通なので、中に入る体験は貴重なものだ。
初めに外観を見た時にはやや違和感が有ったけれど、実際に靴を脱いで入ってみると、予想していなかった程に居心地が良く、暫くそこに居続けたいと思った。
部分として色々な所を見る前に、まずその暗さや寸法、材料、それ等の関係などの全体が、そう感じさせたのだろう。
一方、3分の1の大きさで再現された丹下健三の自邸には少しがっかりした。
中途半端な縮尺で、実物とは違うと解っていても、どうしてもある程度混同して見てしまう。
原寸で部分を再現するか、5分の1位の縮尺にした方が良かったように思う。
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2018年05月17日

日野こもれび納骨堂の見学 : Visiting the Hino Komorebi Charnel

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先週末、「日野こもれび納骨堂」の見学会に参加した。
機械式と合葬式の納骨所を納める横浜市の公共施設で、設計監理は柳澤潤さんが主宰するコンテンポラリーズ。
大きなボリュームとなる自動搬送式の納骨機械を地下に埋め、地上の建物は屋根が連なる形の平屋にして、周囲の墓地や住宅地と馴染むようにしている。
内部も屋根から光を採り入れた気持ち良い場所になっていて、全体的に穏やかで良く出来た建物だと思った。
中で面白いと思ったのは画像に載せた屋外の慰霊スペースで、四角錐の屋根を4隅を避けた4枚の壁が支え、屋外でも屋内でもあるような微妙な開放感が感じられる。
そこと屋内を連続させれば更に面白いように思うけれど、敷地の広さが足りないかも知れない。
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2018年04月27日

ギャラリーを持つ家の見学 : Visiting the House with a gallery

ギャラリーをもつ家

先週末、建築家グループarea045(エリアゼロヨンゴ)の見学会で国分寺市に建つ「ギャラリーをもつ家」を訪ねた。
林雅子さんの事務所が設計して1983年に完成した鉄筋コンクリート造の住宅で、その後所有者が変わり、現在は建築史家の村松伸さんと夫人の山下裕子さんが住まわれている。
当日はお2人に案内をして頂いた上に、林さんの事務所で設計を担当した諸角敬さんと、その後改装の設計をした長尾亜子さんが加わった対話の場を設けて頂き、色々と興味深いお話しを聞く事が出来た。
他人の為に建築家が設計した住宅に住む事には様々な困難が伴うし、その建築家が亡くなっていれば意見を聞いたり改修の設計を頼んだりする事も出来ない。
しかしこの住宅は明快な骨格で全体が出来上がっていて、細部を変えると台無しになるようなものではなく、手を入れながら住む事に対する許容力を備えているように思われた。
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2018年03月07日

建築家とファシズム、イタリアの建築と都市1922-1944 : Gli architetti e il fascismo, Architettura e citta 1922-1944

建築家とファシズム、イタリアの建築と都市1922-1944

第一次世界大戦から第二次世界大戦の間のイタリア近代建築には、以前から憧れと興味を持っていた。
学生の時に建築史の図集で見たテラーニ(Giuseppe Terragni)やリベラ(Adalberto Libera)の作品は小さな白黒写真でもとても魅力的だったし、数年前に実物を見たテラーニ設計のカーサ・デル・ファッショ(Casa del Fascio)は品格が有る素晴らしい建物だった。
最近、友人の鹿野正樹さんが訳したジョルジョ・チゥッチ(Giogio Ciucci)の著作「建築家とファシズム、イタリアの建築と都市1922-1944」(Gli architetti e il fascismo, Architettura e citta 1922-1944)を読んで、その時代のイタリアの状況とそこで建築家が何を考えどう行動したか、随分と教えて貰った。
例えば「合理主義」と言う言葉は、それ等の建築家を語る時にしばしば用いられるけれど、実態はかなり複雑で、ある人はそれを機能と、別の人は古典主義や幾何学と、また別の人は近代主義建築と結び付け、その違いは結局多くのずれや対立を生む事になる。
改めて、この時代のイタリア建築を見て回りたいと思った。

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2017年10月02日

ミノル・ヤマサキの形見 The keepsake of Minoru Yamasaki

 毎日色々な所から送られて来るEメール。ある時、英文のニュースレターに有る1枚の写真に目が止まった。巨大なフォークの形をした錆びた鉄の塊。2001年9月11日に倒壊したニューヨークのワールドトレードセンターの柱だった。
 案内されたウェブサイトの記事を読むと、ワールドトレードセンターの柱はアメリカだけでなく世界中で彫刻などに再利用されていると言う。続けて10程の例が作者と共に紹介されていたけれど、ワールドトレードセンターを設計した建築家、ミノル・ヤマサキの名前は書かれていなかった。*
 あの悲劇が起こった時、深夜のテレビ画面に釘付けになった事を思い出す。煙を上げる建物、そして2回目の衝突。次の朝からは様々なメディアや友人達との会話でたくさんの言葉に接したけれど、その時もやはり、彼の名前は出て来なかった。何千人と言う人が亡くなった大事件で、そうした話題はふさわしくなかったのだろう。その事を解りながらも、僕は寂しかった。自分が建築の道に進んだきっかけの一つが彼だったからだ。
 高校3年生の時、僕はよく校内の図書館へ行った。そこには黄色い表紙に黒い文字で建築家の名前が書かれた品の良い作品集が有って、丹下健三やアルヴァ・アアルト、それに多分ミースやコルビュジェのものも有ったのだろうけれど、気に入って繰り返し見たのは、ミノル・ヤマサキのものだった。思い違いでなければ、その作品集にはワールドトレードセンターの写真と、柱についての説明が有ったと思う。
 彼は幾つもの高層建物を設計する中で、共通する柱の問題を考えていた。主に事務所となる上の部分では、構造的な理由から柱の間隔がある程度狭くなる。しかし下の部分では、出入口やロビーを作るので間隔を広くしたい。それで下の部分にアーチを設けたり、柱を彫刻的な一つの形にまとめたりと色々な工夫をした。その最も洗練された解決策が、上の柱を3本づつフォークのようにまとめて1本にすると言うワールドトレードセンターの形だった。
 僕が今、自分で建物を設計する時にも、ずっと小さい規模で似たような問題を考える事が有る。その解決策を依頼主や友人に説明する事はあまり無いけれど、自分にとってそうした工夫は大切なものだ。その気持ちの中には、ミノル・ヤマサキから受け継いだ何かが有るように思う。
* https://www.world-architects.com/en
Memorializing 9-11 with ‘WTC Steel’ by Lester Levine, 8. September 201
area045 建築家のコラム 2017年10月02日掲載
http://www.area045.com/mutter/291.html
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2017年06月12日

葉山のMさん達の家 Ms. and Mr.M's house in Hayama

葉山のMさん達の家

先月、友人の建築家Mさんが葉山に建てた自宅兼仕事場を見に行った。
海から少し離れた川沿いの住宅地に建つ3階建てで、外観は板貼りの壁の上に帽子のような金属屋根が載っていて、中々印象的。
内部は1階の仕事場から2、3階の居室、屋上と、それぞれ異なった場所が出来ていて、実際の建物の大きさ以上の広がりと豊かさが感じられた。
話しを聞いてみると、Mさんの経験や考えた事を大切にしながら丁寧に設計されたようで、例えば特徴的な屋根の形は、昔住んだ家や気になった街中の建物に有ったものを取り入れ、それを洗練させて用いたそうだ。
建築家の自宅と言うと、気負い過ぎて無理が目立ったり慎重過ぎて凡庸になったりして難しいのだけれど、この建物は成功していると思う。
posted by masaaki at 12:45| Comment(0) | 建築 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする