
12月27日まで横浜のBankART(バンカート)で槇文彦展が開催されていた。
僕は以前槇さんが率いる槇総合計画事務所に勤めていたので、半ば身内の気持ちで見る事になった。
槇事務所は今年完成した新市庁舎だけでなく、横浜で数多くの仕事をしていて、書くべき事は色々有るけれど、会場に入ってすぐ代官山ヒルサイドテラスの展示が有るのを見て、やはり代表する仕事はこれなのかな、とまず思った。
ヒルサイドテラスの1期が完成したのは僕がまだ子供だった1969年で、日本橋に有った槇事務所の移転先となったウェストが完成したのは1998年。
僕が仕事として関わる事はほぼ無かったけれど、辞める前に暫くこの建築と街を体験した事は、良い財産になった。
人目を引く派手なデザインは無いし、特殊な材料や工芸品が使われている訳でもなく、建築家の個性は前面に出ていない。
それでいて、施主から全幅の信頼を得て、内外から広く注目を集め、建築文化に確かな貢献をしている。
こうした仕事が如何に貴重で成し難いものか、自分の事務所を持ってからやっと解ったように思う。