鮮やで印象的な題名は、最果(さいはて)タヒと言う人の詩集から取られたと言う。
今の渋谷や新宿、そして居酒屋や工事現場、病院が舞台になって、登場人物達がそれぞれの世界を生き、交錯する。
有り得なさそうで有りそうな、自分の人生がこうだったかも知れないと思わせてくれる物語。
看護師の美香を演じた石橋静河が特に素晴らしく、途中出て来るアニメーションには賛成出来なかったけれど、忘れられない1本になった。
僕が映画館に行く時は、月に1度位、このような映画を見て、半年に1度位、前に書いた「ゴースト・イン・ザ・シェル」のような映画を見たいと思う。
でもそれが中々難しくて、この映画を上映する館は少なく、見た時も観客は6人だけだった。
映画の公式サイトは下記。
http://www.yozora-movie.com/
2017年06月12日
葉山のMさん達の家 Ms. and Mr.M's house in Hayama

先月、友人の建築家Mさんが葉山に建てた自宅兼仕事場を見に行った。
海から少し離れた川沿いの住宅地に建つ3階建てで、外観は板貼りの壁の上に帽子のような金属屋根が載っていて、中々印象的。
内部は1階の仕事場から2、3階の居室、屋上と、それぞれ異なった場所が出来ていて、実際の建物の大きさ以上の広がりと豊かさが感じられた。
話しを聞いてみると、Mさんの経験や考えた事を大切にしながら丁寧に設計されたようで、例えば特徴的な屋根の形は、昔住んだ家や気になった街中の建物に有ったものを取り入れ、それを洗練させて用いたそうだ。
建築家の自宅と言うと、気負い過ぎて無理が目立ったり慎重過ぎて凡庸になったりして難しいのだけれど、この建物は成功していると思う。
2017年06月02日
「リベラル保守宣言」について About "The declaration of liberal conservatism"

少し前、中島岳志さんが書いた「リベラル保守宣言」と言う本を読んだ。
以前読んだ幾つかのこの人の文章には共感出来たのだけれど、この本には納得出来ない部分が色々有って、すっきりしなかった。
一番の疑問は保守の対極とされる左翼の位置付けで、「人間の理性によって理想社会を作る事が可能と考える立場」だとして合理主義や設計主義に結び付けるのだけれど、これは少し極端な見方だと思う。
確かに左翼とされる人の多くは理性を重視するけれど、そこまで絶対的に考える人は少なくて、理性は完全ではなくしばしば有効でもないけれど、伝統や慣習のように良く解らないものに比べれば信頼出来るし、納得もし易い、と言うように考える人の方が多いのではないかと思う。
そして僕自身もそのように考えるのだけれど、中島さんから見れば左翼と言う事になるのだろうか。
2017年05月27日
すみだ北斎美術館 The Sumida Hokusai museum

少し前、すみだ北斎美術館を訪ねた。
昨年2016年の11月に開館した建物で、設計は妹島和世建築設計事務所。
外観は自然光を嫌う浮世絵の展示に合わせて壁が多く、そこに開口をスリット状に取る事で全体を分節し、周囲の街並みに馴染ませつつ彫刻的にまとめている。
実に賢いやり方で、力強く美しい。
しかし中に入ってみて、少しがっかりした。
展示室でないロビーのような場所まで閉鎖的で息苦しく、動線はエレベーターの利用が中心でそっけない。
全体的に面積が不足していたのか、便所の配置なども不自然で、カフェやレストランが無いので寛げない。
喩えれば、素敵な人が素敵な服を着たのに似合っていない、と言うような状況で、妹島さんも残念に思っているのではないだろうか。
2017年05月10日
ゲルを組み建てる Assembling a ger

先の連休中、友人に誘われて厚木へ行き、ゲルを組み建てるのを手伝った。
ゲルはモンゴルで使われている移動式住居で、漢語では包(パオ)と言う。
慣れた人達がやれば2、3時間で出来るらしいけれど、試行錯誤しながらの作業だったので、僕が1泊する間に出来たのは骨組みまでだった。
近くにはモンゴルからの留学生が作った別の1棟が有ったので、夜はそこで過ごし、持ち主のTさん達と色々話しをした。
Tさんは数年前に知人からの相談がきっかけで周囲の土地を買う事になり、ほとんど1人でそこを切り開き、小屋を建て、野菜を作り始めたそうだ。
今は地元の人にも手伝って貰って、馬も2頭飼っている。
一方で食事はスーパーで安売りしている弁当でも良いと言うから、面白い。
僕の親にあたる世代だけれど、僕よりずっと伸び伸び暮らしている。
2017年04月28日
釜石から来た「まけないぞう」 "Makenaizou" came from Kamaishi

菩提寺の住職から伺った釜石の不動寺へ家に有ったタオルを送ったら、丁寧な手紙と8頭の「まけないぞう」を頂いた。
「まけないぞう」の活動では、寄付されたタオルを使って被災者がそれを作り、販売した400円程の代金から100円が作り手に渡り、50円が基金として積み立てられ被災地に還元される。
阪神淡路大震災をきっかけに神戸で始まり、東日本大震災の後は東北に広がって、今は岩手県沿岸部を中心に40名程の作り手が居ると言う。
僕の所へ来た8頭は釜石の方達が作って下さったそうだ。
1頭は自分の手元に残し、7頭は可愛がってくれそうな人達に引き取って貰おうと思う。
「まけないぞう」については下記ウェブサイトを参照。
http://www.ngo-kyodo.org/makenaizou/index.html
2017年04月24日
映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」 The movie "GHOST IN THE SHELL"

映画「ゴースト・イン・ザ・シェル(GHOST IN THE SHELL)」の予告編で見たスカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)の少佐がほとんど完璧だったので、映画館へ行く気になった。
1995年に見たアニメーションの「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は傑作で、今でもはっきり覚えている。
それぞれの時代にそれぞれの作品が有って、比べても仕方が無いのだけれど、喩えてみれば、前の映画が良く出来たインスタント食品だとすると、今年の映画はそれをレストランで再現した料理になるだろうか。
追記として、終盤に登場する桃井かおりの演技が素晴らしく、作品に深みを与えているのだけれど、何故かパンフレットにも公式サイトにも彼女の名前が載っていなかった。
2017年04月11日
庭木の姿 The shape of trees in the garden

今の季節は木に葉が少なくて枝振りが良く解るから、家の庭木の姿が気になって、ついつい眺めてしまう。
自然に整った形でいてくれれば良いのだけれど、広くない場所に色々植えてあるし建物や電線も有るから、中々そうは行かない。
また放っておくと枝がいたずらに伸びたり重なったり、部分的に枯れてしまったりと言う事も起こる。
それで、こちらの枝を伐ってこちらの枝を伸ばせば何年か後にはこうなって、などと考えるのだけれど、木が大きいと自分で伐るのは難しいし、一度伐ってしまえば元には戻せないから、どうしても眺めているだけの時間が長くなる。
考えてみれば、自分が仕事にしている建築の設計や監理にも、似たような所が有る。
仕事を始める時には建物の大きさや予算は大体決まっているものだし、法規の制約や周囲との関係も有るから、自分が出来る事は限られている。
また実際に自分の手で作る訳ではないので、土地や建物を眺めているだけの時間が長くなる。
そして眺めていれば色々な事に気付くし、色々な事を考えるようになる。
ヨコハマNOW第84号 2017年04月10日掲載
http://yokohama-now.jp/home/?p=16275
2017年04月07日
集合住宅30講 30topics of housing
2017年03月28日
白木蓮の花 The flower of the white magnolia
2017年03月11日
東日本大震災から6年 Six years passed from the East Japan Great Earthquake
2011年3月11日の東日本大震災から6年が経った。
3年前このウェブログに、何かをしたいと言う気持ちだけを持ち続けていると書いておきながら、結局何も出来ていない。
自分の周りの世界が何となく色褪せて実感が無いように感じられてしまうのは、あの災害の為だけではないはずだけれど、色々な事が変わってしまって前と同じように感じたり考えたり出来なくなってしまった事は確かだ。
その後にもあちらこちらで災害は起こっているし、今、ここで起こるかも知れない。
3年前このウェブログに、何かをしたいと言う気持ちだけを持ち続けていると書いておきながら、結局何も出来ていない。
自分の周りの世界が何となく色褪せて実感が無いように感じられてしまうのは、あの災害の為だけではないはずだけれど、色々な事が変わってしまって前と同じように感じたり考えたり出来なくなってしまった事は確かだ。
その後にもあちらこちらで災害は起こっているし、今、ここで起こるかも知れない。
2017年02月25日
2017年の試筆と賞状の名前書き The trial drawing in 2017 and writing names of certificates of prize
2017年02月09日
冬の焚き火 A Fire in winter
2017年01月25日
建築家の素顔展2017 The exhibition, Architect's real faces 2017

(お知らせ)
1月27日(金)から2月3日(金)まで、みなとみらい線みなとみらい駅近くのLIXILショールーム横浜で、建築家グループarea045(エリアゼロヨンゴ)による「建築家の素顔展」が開催されます。
内容は昨年10月に横浜駅東口の横浜新都市ビルで開催したものとほぼ同じですが、私の場所では書を書き直して展示します。
詳細は画像データの案内またはarea045のウェブサイト"http://www.area045.com/"をご参照下さい。
水曜日は休み、入場料は無料です。
1月30日の午後1時半から5時頃までは私も会場に居る予定ですので、お時間が有るかたは是非いらして下さい。
2017年01月06日
2017年の年賀状 The new year's card of 2017
2016年12月27日
年末の餅搗き Making rice cakes at the end of the year
2016年12月10日
花梨エキス Karin extract
2016年11月16日
ドイツから届いたデンマークの音楽 The Danish music from Germany
2016年10月27日
宇都宮市のLRT計画 The LRT project in Utsunomiya city

横浜市では2020年までに高度化バスを導入する事になりLRTの実現は遠のいてしまったけれど、栃木県宇都宮市では2019年度の開業を目指してLRTの計画が進んでいる。
10月23日に横浜にLRTを走らせる会の人達と現地を訪ね、同じ市民団体である雷都レールとちぎの方々や宇都宮共和大学の古池先生、事業主体となる宇都宮ライトレールの方々に案内をして頂いた。
当面の計画は宇都宮駅と東側の芳賀町を結ぶ約15kmで、沿線の工業団地に通う人達の足となり道路渋滞を緩和する事が大きな目的となっている。
その後の西側中心市街地への延伸を含め、良い形で実現して横浜の手本になって貰いたいと強く願う。
画像に載せた写真は飛山城跡より鬼怒川を見たもので、右側の宇都宮駅から来た車両は新しく作る橋で川を渡り左側の清原工業団地へ向かう事になる。
2016年10月19日
街角のヘルツォーク&ド・ムーロン Herzog & de Meuron on the street

東京の青山周辺には有名な建築家が設計した建物が多く、また次々と建てられている。
先日自分が面白いと思ったのは、スイスの2人の建築家、ヘルツォーク&ド・ムーロンがデザインして2015年に完成したミュウミュウ青山店だった。
外壁が鈍い銀色に仕上げられたステンレス板で出来ていて、その一部が鏡のように磨き上げられ、街を行く人や車の姿を映し出している。
言葉で書けばそれだけの事だけれど、実際そこに居ると街角に蜃気楼か異空間が現われたようで不思議な楽しさが有った。
そしてその事が、磨かれた部分の位置や大きさ、磨かれていない部分との境目の処理、板そのものの継ぎ目の扱いなどの工夫によっているのだと思うと、また別の楽しさを感じた。